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令和5年度施政方針

 施政方針は、令和5年度の郡上市における市政運営に関する所信と基本的施策であり、令和5年第1回郡上市議会定例会において市長より表明したものです。

冒頭あいさつ

 本日、「令和5年第1回郡上市議会定例会」を招集いたしましたところ、議員各位には、ご参集いただき誠にありがとうございます。今定例会の開会に当たり、ご審議いただきます諸議案の説明に先立ち、市政運営の基本的な考え方と新年度当初予算の編成方針、また、この予算に盛り込みました主要な施策や事業等についてご説明申し上げ、議員各位並びに市民の皆様方のご理解、ご協力を賜りたいと存じます。

市政運営の基本方針

 それでは、市政運営の基本方針について申し上げます。
 昨年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻は、国際平和に深刻な打撃・衝撃をもたらしただけでなく、物価やエネルギー価格の高騰を引き起こすなど、世界情勢の混乱を招いており、市民生活や地域経済に今なお大きな影響を及ぼしています。このため、政府においては燃料や電気などの価格の激変緩和対策を講じておりますが、市でも独自の物価高騰対策として水道料金の無料化や特に影響が大きい事業者の皆様の事業継続を下支えするため、電気やガス、石油燃料など高騰するエネルギー価格に対する支援を実施してまいりました。また、新型コロナウイルス感染症については、「岐阜県医療ひっ迫防止対策強化宣言」が2月5日をもって1週間前倒しで終了となるなど、現在、第8波が収束に向かいつつあり、5月8日からは新型コロナウイルス感染症を「5類感染症」に位置付けることが決定されています。このため、感染防止対策を講じつつも5類への変更に伴う対応について、今後出される政府の方針等を見ながら適切に対処したいと考えます。こうした対策をはじめ、新年度において特に重点的に行う取組みとして、5つの重点を掲げます。
 まず、1つ目は、「合併・市制施行20周年記念」を迎えるに当たっての対応です。本市は令和6年3月1日に合併20年を迎えます。振り返ってみますと、私が市長に就任した平成20年は、合併5年目を迎えた新生郡上市の「第二ステージ」の始まりの年でもありました。人間でいえば、体と心が発達し社会性が芽生える「園児」の頃であり、当時、市民・市議会・市職員との3つの対話と協働を重視して市政を推進することを市民の皆様にお約束し、これまで都市自治体としての一歩一歩を刻んでまいりました。それ以来15年、間もなく19歳となり、民法改正により既に「大人」として歩みだしている年齢であります。しかしながら、本市においては人口減少、少子高齢化、地域経済の低迷をはじめとして、解決すべき課題が多くあることから、満20年を節目としてこれまでの市政の検証を行いつつ、将来に向けての持続可能なまちづくりの取組みを市民協働で進めてまいりたいと存じます。
 なお、昨年11月には、「郡上踊」と「寒水の掛踊」を含む「風流踊」がユネスコ無形文化遺産に登録され、本市の地域文化資源が世界に認められたことは大変喜ばしいことであります。合併20周年と併せ、この機を捉えて本市の魅力を最大限活用する取組みも進めてまいります。
 2つ目は、「人口減少克服・地方創生」です。日本全体の人口減少が急速に進みつつあるなか、本市も例外ではなく、市全域が過疎地域に指定されるなど人口減少が続いていることから、これまでもできる限りその影響を抑えるべく、子育て対策、移住定住対策をはじめ様々な人口減少対策を行ってまいりましたが、特に、昨今の世界的な社会情勢の変化は、さらに人口減少が進む要因として懸念されます。このため、引き続き子育てや移住定住の対策を推進するとともに、小さな拠点とネットワークの構築や地域の活性化に向けた取組みを推進するなど、住みやすい環境づくりに努めてまいります。
 3つ目は、「観光立市郡上の推進」です。新年度においては、新型コロナウイルス感染症の5類への変更に伴い観光需要の回復が見込まれることから、郡上市観光連盟や関係する事業者の皆様と連携し、アフターコロナを見据えた「通年・周遊・体験型プログラム」の充実を図るなど、持続可能な観光地域づくりを推進するほか、地域経済の循環に資する郡上ふるさとコインの積極的な活用を図ってまいります。
 4つ目は「持続可能な地域産業の振興」です。市内の雇用の場の確保を図るため、以前より検討を進めておりました美並町の大矢元工業団地の整備については、令和7年度の完成を目指し、新年度より本格的な整備に着手いたします。今後、積極的な企業誘致に努めるほか、市内事業者等の皆様が抱える人材や後継者の不足といった課題の解決に向け、スマート農林業など業務の省力化に向けたDXの推進にも取り組んでまいります。
 5つ目は、「脱炭素社会郡上の実現」です。今年度、総合的な気候変動対策として市民の皆様と共に策定作業を進めております「地球温暖化対策実行計画(区域施策編)」では、令和12(2030)年度のCO2削減目標を平成25年度と比べて46%削減(国の目標と同水準)とすることを目指しています。今後、SDGsの推進と併せて、市民、事業者、行政等が一丸となって温室効果ガスの削減に向けた取組みに加え、再生可能エネルギーの導入などを促進してまいります。
 なお、これらの具体的な取組みについては、後ほど分野別の主要施策のなかで申し述べます。

令和5年度の予算編成について

 こうした背景や考え方を基に、令和5年度の当初予算案を編成いたしました。その結果、一般会計の性質別歳出のうち、「投資的経費」の「普通建設事業費」では、令和6年4月の開校に向けた「大和小学校」の普通教室棟の建設、管理・特別教室棟の大規模改修等に伴う「小学校統合整備事業」、同敷地内に放課後児童クラブ棟の建設を行う「放課後児童クラブ整備事業」、美並振興事務所機能のさつき苑への移転及び併設するデイサービスセンター・保健センターの大規模改修を実施する「庁舎等整備事業」「老人福祉施設整備事業」等により、前年度対比27.3%、11億1,806万円増の52億624万円を計上いたしました。「災害復旧事業費」については、市道鍛冶屋洞線の地すべり災害復旧の進捗等に伴い37.5%、1億6,200万円減となる2億7,040万円を計上いたしました。「義務的経費」の人件費については、令和4年の人事院勧告に鑑みた一般職に係る給与改定に伴い0.8%、3,537万円増の46億7,224万円、「扶助費」は3,006万円減の29億5,294万円、「公債費」は1.6%、5,769万円減の35億4,987万円となりました。「その他の経費」の中で「物件費」は、エネルギー価格の高騰を受け、施設の維持管理に係る電気料・燃料費等が一般会計全体で3億3,178万円増となっていることなどにより8.3%、3億6,177万円増の47億3,433万円、「補助費等」は0.5%、1,816万円減の37億8,777万円、他会計への「繰出金」は0.3%、603万円減の20億7,301万円を計上いたしました。
 一方、歳入のうち「市税」では、新型コロナウイルス感染症により停滞していた経済活動が緩やかに回復することが見込まれることから、「個人市民税」の税収増や新増築家屋及び設備投資に係る償却資産の増などによる「固定資産税」の増額分を勘案し、「市税全体」では前年度と比べ1.3%、6,099万円の増額となる48億9,332万円を計上いたしました。「地方交付税」については、国において地方交付税総額(出口ベース)を前年度対比で1.7%、3,073億円増額し、18兆3,611億円とすると計画されております。従って「普通交付税」については、「合併特例債」、「過疎対策事業債」等の公債費(元利償還費)の需要額算入減少の要因もありますが、国の「臨時財政対策債」総枠の大幅な減少と「地方交付税総額」の増額分を考慮したことにより、前年度と同等の109億円を計上いたしました。また、「特別交付税」については、近年の最終決定額の推移を勘案して前年度比2.6%、2,000万円増の8億円を計上し、「地方交付税全体」としては0.2%、2,000万円増の117億円といたしました。
 「市債」におきましては、「通常債」で26億4,240万円を計上しました。昨年4月に郡上市全域が過疎地域に指定されたことを受け、積極的な活用を図ることとして「過疎対策事業債」を大幅に増額したことなどにより、令和4年度予算と比較しますと9億7,080万円増額となりました。「臨時財政対策債」は、国の総枠の大幅な減少に伴い58.4%、1億4,600万円減の1億400万円を計上し、「市債全体」では42.9%、8億2,480万円増の27億4,640万円を計上いたしました。
 以上の結果、令和5年度当初予算の一般会計の予算規模としては、歳入歳出それぞれ286億2,300万円で、前年度当初予算と比較して4.7%、12億9,500万円の増となっております。なお、「地域振興事業」「郡上八幡 町屋敷越前屋活用事業」「産業支援センター活動経費」等の財源に充てるために「地域振興基金」から1億5,000万円、ケーブルテレビ伝送路更新費の償還財源に充てるため「ケーブルテレビ事業整備基金」から9,381万円、「森林経営管理事業」「小学校統合整備事業」の木質化に係る財源として「森づくり振興基金」から5,000万円などを繰り入れることとし、「財政調整基金」からは一般財源の不足を補うために5億5,000万円を繰り入れることにより、予算を編成したことを申し添えます。
 また、財政調整基金については、令和4年度最終の専決補正予算において、歳入歳出の決算見込み、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金による財源調整等を勘案しながら令和4年度の取崩しを可能な限り減額し、基金残高の確保に努めたいと考えております。
 このような方針に基づき編成した令和5年度当初予算の規模は、一般会計286億2,300万円(4.7%、12億9,500万円の増)、特別会計113億9,094万円(2.0%、2億2,358万円の増)、企業会計118億59万円(0.3%、3,288万円の減)、合計518億1,453万円(3.0%、14億8,571万円の増)となりました。

分野別主要施策

 続きまして、「第2次郡上市総合計画」の柱立てに沿って、7つの分野別施策における項目ごとの主な内容をご説明いたします。

1.産業・雇用(地域資源を活かして産業を育てるまち)

 最初に1つ目の柱である『産業・雇用』についてであります。
 本市の基幹産業である農業においては、高齢化や農家の減少、鳥獣被害に加え、肥料、資材、燃料の高騰などにより厳しい状況にあることから、中山間地域の特性を活かした多様な取組みを進め、持続可能な農業・農村を目指します。特に、地産地消を促進するため、市内農産物の流通と利用促進を図るとともに「郡上の大地を味わう日」を継続して実施し、学校給食における市内農水産物や特産品の利用拡大に取り組みます。
 また、産地の維持・発展のため、新たに持続可能な農業経営の体制づくりを積極的に進める団体に対する補助制度を創設し、振興作物の産地維持を側面から支援するほか、基幹農業施設の整備についても引き続き支援を行います。さらに、目指すべき将来の農地利用の姿を明確化する地域計画を作成しつつ、集落営農組織の設立や農地集積を図るとともに、新規就農者・農業後継者・女性の農業参画を支援し、地域課題の解消に努めます。
 鳥獣被害防止対策では、有害鳥獣捕獲の強化や恒久柵の設置・狩猟免許の取得などへの助成を行うとともに、再造林地が増えているため、新植苗の食害による林業被害対策を講じるものに対して新たな助成を加え、引き続き住民主体の捕獲、防除活動を推進します。
 森林・林業については、森林環境譲与税及び森林経営管理制度を活用し、森林整備の推進や境界明確化、人材育成、木育などを推進します。また、林業従事者の安全対策として安全装備品などの導入支援のほか、林業団体が自ら開催する労働安全衛生対策研修への支援を新たに実施します。災害防止を目的とした生活保全林整備など多様な取組みも加速させ、森林の公益的機能向上と地域住民の安全・安心の確保に努めます。また、5年間に亘って林野庁のモデル地域選定を受けて行ってきた郡上地域林業成長産業化モデル事業のさらなる充実に向け、郡上森林マネジメント協議会が行うICT技術を活用したスマート林業の一例である森林マネジメント支援システムの導入を支援し、効率的で高精度な森林経営計画等を作成する実証事業を行います。木材の生産・流通・消費構造の効率化による林業の成長産業化に取り組み、「脱炭素社会郡上」の実現に向け、再造林や保育の推進、木材利用の拡大を図ります。また、農業・林業の振興を図るため、農業生産基盤及び農業集落環境の整備を進めるとともに、林道網の計画的な整備、点検結果を踏まえた林道橋及びトンネルの修繕工事の実施、治山対策事業による山地荒廃防止対策など、安定した森林づくりのための基盤整備事業を推進します。
 畜産振興については、畜産公共事業を推進し、持続可能な畜産経営に必要な生産基盤の強化を図ります。酪農では優良な乳牛の確保、和牛については「飛騨牛」生産に必要な繁殖牛の確保と肥育技術の指導と支援を行うほか、家畜伝染病の侵入を防ぐための防疫体制の強化に努めます。また、令和9年に開催予定の第13回全国和牛能力共進会に向けた候補牛の生産と飼育管理の指導に努めます。
 続いて、商工振興及び雇用対策については、市内企業の景況調査等によれば人口減少、少子高齢化に伴う人手不足、人材不足が顕著となっています。このような現状に対し雇用拡大を図っていくため、市内には多種多様で希望を持って働くことができる企業が多く存在することを、市内外の学生、保護者に対し積極的な情報発信を行います。雇用維持の面では、より魅力ある企業となるよう企業の働き方改革への支援を進めるとともに、新たな雇用の場を創出するため 美並町の大矢元工業団地の整備を推進します。また、コロナ禍の下での新たな生活様式への変化などにより、小規模事業者においても事業継続の効率化、デジタル化が求められていることから、市独自の決済システムである「郡上ふるさとコイン」の利用増加を図ることで、業務の効率化や市内経済効果の拡大を目指します。また、商工会や産業支援センターへの事業費の支援や負担を行うとともに、相談窓口の充実を図り、販路拡大などの事業者の様々な相談に対応します。
 観光振興については、新型コロナの5類移行後の今年の夏こそは、郡上のおどりが通常開催できるよう調整を進めるとともに、「風流踊」のユネスコ無形文化遺産登録を契機とする情報発信に取り組み、さらには踊りの保存継承に向けた保存活用計画の策定を行います。踊りに対する市民の皆様の関心と気運が一層高まるための各講習会を強化するなど、「日本一のおどりのまち郡上」の確立を目指します。また、郡上八幡城が再建90周年を迎えるに当たり記念事業を実施します。
 「観光立市郡上」の実現に向けては、郡上市観光連盟が運営するホームページ「TABITABI郡上」を有効に活用し、多様なデータ収集とその分析結果に基づく官民協働による観光地域づくりに引き続き取り組みます。特に、SDGsに対応したサイクリング周遊商品の造成を支援するなど、多様なアウトドア体験ができる自然環境や奥深い歴史文化などを活かした郡上独自の滞在型観光を創出します。さらには、外国人の新規入国制限の緩和に対応し、国際競争力の高いスノーリゾートづくりを実現するため豪州への誘客活動を実施します。
 以上、『産業・雇用』の施策に25億328万円(一般会計24億4,268万円、特別会計6,060万円)を計上いたしました。

2.環境・防災・社会基盤(美しい水と緑を守り、暮らしの基盤が整う共生のまち)

 次に、2つ目の柱である『環境・防災・社会基盤』についてであります。
 「脱炭素社会郡上」の実現を目指し、郡上市地球温暖化対策実行計画(区域施策編)に基づき、省エネにつながる情報発信を積極的に行うほか、一般住宅での自家消費型太陽光発電設備及び蓄電池の整備を促進します。また、市内における再生可能エネルギー発電設備の整備が計画的に進められるよう「(仮称)郡上市再生可能エネルギー基本計画」を策定します。
 不法投棄の防止やごみの削減に対する対策として、令和4年12月議会で表明した「郡上市プラスチックごみゼロ宣言」や、令和4年度に策定した「郡上市食品ロス削減推進計画」に基づく取組みを実施します。清流長良川をはじめ源流域に位置する郡上市の責務として、河川・海洋におけるプラスチック汚染問題に率先して取り組んでまいります。関係機関や関係団体と連携を密にし、市内一斉清掃、現状把握のための長良川での河川ごみ調査、環境教育のための小中学校での出前講座などを実施します。また、生ごみの削減を図る取組みとして、「郡上もったいないプロジェクト(Gumotta)」や家庭でのダンボールコンポストによる生ごみ堆肥化の普及啓発に努めます。
 廃棄物処理事業については、施設運営の適正管理及びコスト削減に努め、安全で効率的な廃棄物の処理を実施するとともに、郡上クリーンセンターの更新に係る計画策定などを進めます。
 水道事業については、老朽管路の更新・耐震化事業を推進し、効率的・安定的な供給が可能となる運営体制の整備を進めます。また、下水道事業については、下水道施設長寿命化事業や下水道処理施設の統廃合による事業のスリム化を推進し、効率的な運営体制の確立と経営の健全化を目指します。
 次に消防・防災についてであります。常備消防では、危険物施設火災に対応できる水槽付消防ポンプ自動車及び水槽車の可搬ポンプの更新を行うなど、消防力の充実強化に努めます。また、現在、運用中の「病院案内サービス」から、救急相談及び病院案内など市民の皆様に安心・安全情報が提供できる「救急安心センター事業#7119」によるサービスへと移行し、運用します。非常備消防は消防団員の年報酬を改め処遇改善を進めるとともに、出動態勢を確保するため消防団組織の再編を進めます。なお、再編に伴い余剰が見込まれる消防団車両、小型動力ポンプについては、更新計画を延伸し適期を見極めながらの更新を進めてまいります。災害対策においては、備蓄食料の食物アレルギー28品目対応品への更新を計画的に進めます。
 交通安全対策では、見通しが悪い箇所へのカーブミラー設置、交通安全協会、道路管理者、警察及び鉄道と連携・協力した安全対策・啓発などを通じ、交通事故のない地域を目指します。
 社会基盤の整備については、国県事業である国道156号「郡上大橋架替」や「為真、大島歩道」の整備促進、濃飛横断自動車道「八幡から和良間」の早期事業化などを関係機関へ強く働きかけるとともに、市事業では、有利な補助金並びに起債について検討・活用しながら道路新設や改良事業を推進します。また、長大な延長を有する市道には経年による道路の損傷等も増加傾向にあるため、これらの適正な管理に努めるなど道路ネットワークの強化や安全安心な道路交通の確保に向けた取組みを進めます。加えて、国から改良すべき踏切道として指定を受けた大和町万場地内の第5下万場踏切道については、本年度より第1種化に向け取り組みます。
 さらに、河川改良事業や急傾斜地崩壊対策事業などの予防保全型の事業や災害復旧事業を進めることにより、山腹崩壊や河川護岸の損傷を防ぎ、市民生活の安全確保に努めます。
 住環境整備については、防災対策として木造住宅をはじめとした建築物の耐震化やブロック塀等の撤去費に対する助成を行い、安心安全な住環境の形成に努めるほか、家屋の適正な管理に関する啓発活動や利活用に関する助成により空き家の発生抑制に努めるとともに、特定空家の解体撤去費に対する助成を行うなど空き家対策を推進します。さらに、八幡市街地における歴史的建造物の修理・修景や道路舗装の美装化を行い、景観に配慮した安全で快適なまちづくりを推進します。
 市営住宅については、公営住宅等長寿命化計画に基づき大規模改修を行うとともに、適正な維持管理に努め、良好な住宅環境を提供します。
 次に、公共交通については、令和5年3月に策定予定の「郡上市地域公共交通計画」に基づき、バス路線の見直しの検討など市民の皆様の足の確保に努めます。また、厳しい経営状況が続く長良川鉄道については、「将来のあり方」について沿線自治体と引続き検討を進めます。
 ケーブルテレビ事業については、ICT活用やDX(デジタルトランスフォーメーション)推進における重要なインフラとして、適正な維持管理と安定的なサービスの提供に努めます。また、デジタル技術を効果的に活用して地域課題の解決を図るため、新年度において、全庁的、横断的にDXを推進していくための最高情報責任者(CIO)である副市長のマネジメントを専門的見地から補佐する「DX推進アドバイザー」を新たに外部に委託し、具体的施策の立案や推進体制の構築、デジタル人材の確保・育成などに取り組みます。
 以上、『環境・防災・社会基盤』の施策に37億5,046万円(一般会計30億8,886万円、特別会計56万円、企業会計6億6,104万円)を計上しました。

3.健康・福祉(支えあい助け合う安心のまち)

 次に、3つ目の柱である『健康・福祉』についてであります。
 結婚支援については、日常の相談対応が岐阜県のマッチングシステムの利用が多くなっている現状を踏まえ、一部相談業務の外部委託など相談体制の見直しを図ります。また、住宅の賃借費用や引っ越し費用などを経済的に支援する「結婚新生活支援事業」を引き続き実施します。
 子ども・子育て支援については、子育て世代包括支援センターを中心に支援の充実を図り、安心して子どもを生み、育てやすい環境づくりを進めます。また、子育て中の親子が気軽に集い、交流や相談ができる場を設けるとともに、共働き家庭のニーズに対応できる環境の充実に努めます。子育て世代への経済的支援策として、「がんばれ子育て応援事業」を継続するとともに、妊娠届け出時や妊娠中・出産後の面接やアンケートにより必要な支援につなぐ伴走型支援と、妊娠時と出産時にそれぞれ5万円を支給する経済的支援を一体的に行う「出産・子育て応援交付金事業」を新たに実施します。
 社会福祉については、複雑・複合化した生活課題に対応する包括的な相談支援体制の構築に向け、新年度において重層的支援体制整備移行準備事業を実施し、「重層的支援体制」の早期導入を図るほか、生活に困窮される方に対する適切な支援を引続き行ってまいります。
 障害福祉については、各種障害福祉サービスによる地域生活の支援や子ども発達支援センターにおける療育支援の充実に努め、障がいのある方はもとより、そのご家族の支援に向けても関係機関との連携を密にし相談体制の強化を図ります。
 高齢福祉については、深刻化する介護人材不足への対応として、新たに中高年男性のセカンドキャリア形成に着眼した啓発事業を展開します。また、ひとり暮らし高齢者の増加などを踏まえ、郡上市社会福祉協議会への委託事業である成年後見支援センターの機能を強化し、成年後見制度の更なる利用促進を図ります。そのほか、介護サービスの安定的な提供を行っていくため、デイサービスセンターやまと及び美並デイサービスセンターの設備改修を行います。
 郡上偕楽園の移転整備については、可能な限り早期の基本設計の完成と実施設計の着手に向け、地域住民をはじめ関係者の意見を踏まえながら、機能性と利便性の高い整備内容となるように留意して準備を進めてまいります。
 健康づくりについては、健康寿命の延伸を目指し、地域、職場等による健康行動を盛り上げるため「健康づくりプロジェクト事業」を引き続き実施します。また、健康診査、がん検診等については、未受診者対策に取り組むとともに、内臓脂肪症候群改善に向けた保健指導、高血圧及び糖尿病による腎症の重症化予防対策事業を推進します。
 新型コロナウイルス感染症対策については、国の方針に基づき、県や郡上市医師会と連携して対策を推進するとともに、市民及び各事業者等への感染防止策の徹底を促し、緩みない感染拡大防止に努めます。
 公立2病院では、医療サービスを安定的に提供するため、医療従事者の確保対策推進、計画的な医療機器の整備・更新を進めます。少子高齢化、人口減少による医療需要の変化や岐阜県地域医療構想を踏まえ、市内の公立・民間医療機関相互の適正な役割分担、病床機能や規模の見直し、急性期医療やへき地医療にも配慮した医療体制づくりに向け、引き続き協議・検討を行います。
 国民健康保険は、健診事業などの予防活動や健康づくりの推進と啓発を図り、市民の健康維持や医療費の抑制に努めます。また、コロナ禍の下での経済状況に鑑み国保税率を据え置くとともに、国・県による一層の公費負担の確保に努めます。このほか、高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施に取り組みます。
 以上、『健康・福祉』の施策に130億7,646万円(一般会計36億476万円、特別会計92億3,155万円、企業会計2億4,015万円)を計上しました。

4.教育・文化・人づくり(香り高い地域文化と心豊かな人を育むまち)

 次に、4つ目の柱である『教育・文化・人づくり』についてであります。
 本市の教育は、「第3期郡上市教育振興基本計画」に基づき、学校・家庭・地域・関係機関が連携を深めながら、引き続き各施策を推進します。
 学校教育では、確かな学力と豊かな心を育む教育の推進に当たり、教科、道徳、特別活動、総合的な学習の時間などにおいて、ICTの活用と多様な体験活動を計画的に取り入れながら、主体的・対話的で深い学びを実現し、子どもたちの「知識・技能」、「思考力・判断力、表現力」、「学びに向かう力や人間性等」の資質・能力を一体的に育ててまいります。また、地域の魅力の実感と追究、SDGs、循環型社会などを重点に、郡上市の「ひと、もの、こと」から深く学ぶ「郡上学(ふるさと体験学習・キャリア教育)」を、学校運営協議会や地域の人・企業等と連携して推進します。このほか、「命の教育カリキュラム」を活用し、道徳教育と多様な人とふれあう体験活動を通して、自他の違いを認め合い、自他の命を大切にする「命の教育」にも力を入れてまいります。また、中学校1校に不登校対応指導員を1名配置し、「F組(フリーカリキュラムクラス)」を設置して、不登校生徒支援の充実を目指した事業を推進します。 なお、各校においては、緩みない新型コロナウイルス感染防止対策を継続してまいります。
 学校規模の適正化については、大和地域の4つの小学校を統合した「大和小学校」の令和6年4月の開校に向け、これまでに、仮設校舎の運用開始や屋内運動場と普通教室棟の建設に着手しており、新年度は管理・特別教室棟の大規模改修などに着手します。なお、整備に当たっては脱炭素社会郡上の実現に向け、内装木質化、複層ガラスやLED照明を採用します。また、安心して通学できる通学路の設定や新しいPTA組織の編成など、開校に向けた様々な準備を進めるとともに、歴史ある4つの小学校の閉校に当たり、閉校記念誌の作成など地域の皆様の心に残る事業についても支援を行います。
 社会教育については、地域・家庭・学校が連携し、児童生徒の地域活動への参加や安心安全な学校活動を支援する「地域学校協働活動」の推進や、家庭の教育力の向上を支援する家庭教育学級の開催、青少年育成市民会議等による青少年の健全育成を図ります。また、地域の集いの場、学びの場である公民館による各種行事・講座等の開催や、郡上学講座の開催、地域の魅力を再発見する郡上かるたの普及を進め、「地域づくり」「人づくり」を推進します。このほか、より豊かな子どもの読書活動を目指し、園や学校、PTA等と連携して、読書の楽しさを家族で共有する「家読(うちどく)」を推進するなど、暮らしに役立つ図書館づくりを目指します。
 文化財関係では、市内の文化財を後世に継承するため適切な保護、保存に努めるとともに、歴史資源として活用するため「文化財保存活用地域計画」の策定に向けた調査研究を行います。大和町の国名勝東氏館跡庭園と県史跡篠脇城跡については、篠脇城跡の山頂において居館等の施設の痕跡や庭園跡が発見され注目を集めており、これを踏まえた調査報告書を取りまとめ、一体的な「国史跡指定」を目指します。また、白鳥町長滝の県指定重要有形文化財若宮家住宅及び周辺施設は、寄贈を受けた土地家屋の測量や調査を行い、今後の整備について計画の策定を進めます。
 無形民俗文化財では、「郡上踊」「寒水の掛踊」を含む全国41件の「風流踊」がユネスコ無形文化遺産に登録されたことを記念して、基調講演と「風流踊」の実演を併せたイベントを開催します。また、国選択無形民俗文化財・県指定重要無形民俗文化財である「白鳥の拝殿踊」の調査は、昨年夏3年ぶりに拝殿踊りが開催され、実地での調査が行われたことから、新年度も引き続き調査研究を進めます。このほか、引き続き中世の郡上の礎を築いた東氏の歴史や和歌文化を次世代へ継承するため、創作オペレッタ「東氏ものがたり」の制作・上演や子ども短歌教室、朗詠教室の開催をいたします。
 スポーツ振興では、市民の皆様が心身共に健康であるための「1市民1スポーツ」を引き続き推進します。少年スポーツの支援については、少子化のなかで活動を維持できるよう、少年スポーツ団体などの組織の見直しを進めるほか、学校運動部活動及び新たな地域クラブ活動のあり方や運営体制、活動内容等について検討を進めます。そのほか、郡上市スポーツアドバイザーを活用した指導者研修により人材確保と指導力の向上を図ります。スポーツツーリズムの推進に向けては、交流人口の拡大と地域経済の活性化を目指し、引き続き大会や合宿の誘致を進めるほか、スポーツコミッションを中心にワンストップ窓口によるサービスの充実を図ります。また、郡上市に縁のあるトップアスリートを招き、スポーツの価値や魅力を感じる機会、子どもたちが夢や憧れを持つ機会を設け、スポーツに取り組む契機となることを目指します。
 以上、『教育・文化・人づくり』の施策に19億9,228万円(一般会計19億6,678万円、特別会計2,550万円)を計上しました。

5.自治・まちづくり(市民と行政が協働でつくるまち)

 次に、5つ目の柱である『自治・まちづくり』についてであります。
 協働によるまちづくりを進めるため、市民協働センターと連携して地域づくりにつなげるためのネットワークづくりや「Good郡上プロジェクト」の具現化と併せて、情報発信などを積極的に実施します。また、令和4年度に実施した「自治会・地区会アンケート」の結果に基づき、自治会の課題等を収集することで、更なる地域づくり活動につなげます。このほか、「ひと・まちづくり推進事業」では、地域の担い手不足の解決に向け、情報通信技術を活用した実践的な講座を展開することで、将来の郡上を担うICT人材の育成につなげる取組みを進めます。
 関係人口の創出・拡大と、移住・定住の促進を図るための新たな取組みとして、SNSを活用した情報発信のシステム構築に着手いたします。これにより、地域づくりの新たな担い手として期待できる関係人口のほか、将来のUターン候補である市内出身の若者世代などとのつながりを持つことが可能となり、効果的かつ多様なニーズや関心に応じたきめ細かな情報発信を行うことで関係人口及び移住人口の獲得を目指します。また、本市の豊かな地域資源を活用した「源流ワーケーション」については、利用者への補助制度を創設し、誘客の強化と利用促進を図ります。
 男女共同参画の推進については、座談会や、女性起業家等によるマルシェを中心とした「ともいきフェア」を開催するなど、意識改革や女性の活躍に向けた周知・啓発に努めます。
 都市交流推進事業では、各都市の催事等の再開に併せ、市民間の活発な相互訪問を支援するとともに自治体間のつながりを深めます。また、首都圏への情報発信拠点として活用を目指す東京都港区「札の辻スクエア」内の商業施設が今春開業することから、特産品など郡上の魅力を積極的に売り込みます。国際交流推進事業では、市内国際交流団体と協働して「日本語ボランティア養成講座」、「日本語教室」等を継続して開催し、増加傾向にある外国人市民の言葉の支援及び交流活動の仲間づくりに努めます。また、「合併・市制施行20年」を迎えるに当たり、これを市民の皆様とわがまち郡上の持続的発展に向け考え行動する契機と捉え、来年3月には「記念式典」を執り行うとともに、関連する記念事業を多面的に行います。併せて郡上市政20年の歩みを記録映像として制作し、これまでの取組みの検証とこれからの市政運営への活用を図ります。
 以上、『自治・まちづくり』の施策に2億1,086万円(一般会計2億1,086万円)を計上しました。

6.地域振興(個性あふれる地域づくりを推進するまち)

 次に、6つ目の柱である『地域振興』についてであります。
 市全域が過疎地域となったことを受けて令和4年度に改訂した「過疎地域持続的発展計画」に基づくソフト事業を推進するとともに、地域づくりの指針となる7地域の「地域振興計画」や地域協議会での協議等を踏まえ、各地域の課題を明らかにし、地域づくりにつながる取組みを実施・支援します。
 このほか、濃飛横断自動車道和良工区の道路整備計画に併せて、地域活性化やまちづくりの拠点となる施設の検討及び基本構想の策定を行います。

7.行財政運営(健全な行財政運営を実行するまち)

 最後に、7つ目の柱である『行財政運営』についてであります。
 人口減少や少子高齢化、担い手不足、新型コロナウイルス感染症に起因する景気の低迷などの課題が山積するなか、その課題解決に向け、引き続き持続可能なまちづくりに向けた行財政運営に努めるとともに、行政改革大綱の見直しに着手いたします。また、公共施設の適正配置に向け、施設の統合や廃止等の実効性を高めるための「行動計画」については、現在、協議が整った案を順次ホームページに公表しておりますが、一部令和4年度内に完成できない計画もあることから、施設を長く保つための「保全計画」と併せて新年度において引き続き作業を進めます。
 耐震性が無く老朽化が進んでいる美並庁舎の地域の防災拠点としての機能強化に向け、振興事務所機能を美並健康福祉センターさつき苑内に移転するとともに、併設するデイサービスセンター及び保健センターの改修整備を同時に実施し、隣接する日本まん真ん中センターとともに公共施設の拠点化による市民サ-ビスの向上を目指します。
 行政のデジタル化(いわゆる自治体DX)については、これまでに各種申請やアンケート調査などのオンライン化やデータ入力作業の自動化などにより業務の効率化を図る取組みを進めてきました。新年度も引き続きこれらのシステムの利活用を図り、デジタル化による利便性の向上と行政事務の効率化に取り組みます。 マイナンバーカードについては、引き続きカードの未取得者に対する取得促進を図るため、職場などへの出張による申請受付けや平日の時間外や休日の交付窓口を引き続き開設します。
 職員給与費については、主に令和4年人事院勧告に鑑みた給料や勤勉手当のプラス改定、令和4年6月期に行った期末手当の減額調整がなくなることによる増及び職員の定年退職等に伴う若年層職員との入れ替わりによる減などの理由により、一般会計では1,685万円の増、特別会計では2,820万円の増となりました。また、公営企業会計においては、以上の理由に加え、医師をはじめとした医療職職員の確保などの理由により6,441万円の増となり、全会計を通じては1億946万円の増となりました。職員の給与については、民間給与や国家公務員給与等との均衡の原則、職務と責任に応じて支給する職務給の原則を踏まえ適切に措置するとともに、令和5年4月から始まる定年延長に適切に取り組み、引き続き定員適正化計画(第3次改訂)に基づく適正な定員管理に努めます。
 市税は市財政の根幹であり、適正かつ公平な課税とともに、滞納税額の縮減に努めます。
 一般会計における公債費では、「財政中期試算」に基づく地方債の発行額抑制や繰上償還により、元利償還金は35億4,987万円で、令和4年度当初予算からは5,769万円の減となっています。令和5年度末の市債残高見込額は、283億8,009万円となり、令和4年度末見込みと比較して7億112万円の減少となり、ピーク時の平成17年度末の市債残高538億4,108万円と比べて47.3%、254億6,099万円の減少となる見込みです。
 これらの、『行財政運営』の分野の施策に、給与費、公債費、施設管理費等を除く政策的及び投資的経費として4億6,174万円(一般会計4億6,174万円)を計上しました。

 以上、令和5年度の予算編成に当たり、市政運営の基本的な考え方と重点施策の概要について申し上げました。合併・市制施行20年の先を見据えながら、持続可能な郡上市の未来に向けて市一丸となり取り組んでまいりたいと思いますので、議員の皆様並びに市民の皆様には今後とものご支援とご協力をお願い申し上げます。

 令和5年2月24日

郡上市長 市長:日置敏明

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0575-67-1147

〒501-4297 岐阜県郡上市八幡町島谷228番地
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